たしかにこれを言った後しばらくは家事を頑張って覚えようとしていた。
 それも長く持たなかった。
 ほぼ毎日お手伝いさん呼んでるのを知っている。
 妻の母が可哀想だからと。
 やめてくれと言ったらしばらく呼ばなくてまた呼ぶの繰り返し。

 ――なんのために妻はいるんだろう?

 仕事しないならせめて家のことをやってほしいと何度も言ったが、妻の勢いとワガママに根負けしてしまう。
 惚れた弱みをずっと握られてる。妻の親にやっと認めてもらった結婚だから。
 夫婦って対等じゃないかと思う。
 妻にとっては全員下僕、都合のいい人間としか思ってないだろう。
 こんな状況なのに全く来る気配ないんだから。

「悠真、お前1回結花さんと離れた方がいいと思う。このままだとマジで潰れる」
 凝視する陽貴の目から怒りと悔しさが滲み出る。
「うん、そうか。でも結花が可哀想だから……」
 可愛い妻のために、娘のために、すぐ回復して働かなきゃ。
 結婚の時の約束守らなきゃ。
「おめえ、自分の状況わかってんのか」
 静かに怒鳴る陽貴。目が据わっていた。
 陽鞠もその姿を見て縮こまる。
「にーちゃん、俺は家のためにしなきゃ、結花を幸せに……まだ洗い物が残って」