「うーん、自分でもよく分からない。もう体が持たないのは確か」
「悠真、お前戸塚くんや他のスタッフ言ってたけど、無理しすぎなんじゃないか? 結花さんと陽鞠ちゃんのためにとはいえ。夜遅くまで働いてるって聞いたけど。数年前から」
 悠真の心臓が跳ね上がる。
 どうしよう、本音がバレる。
 仕事が終わっても残業したくなるリーマンの気持ちが非常に分かる。
 世間が働き方改革だ、残業減らしましょうとか言ってるけど、世の中には自分から遅くまで職場に残る人がいる。
 多分自分もその1人だと思う。
 家に帰っても妻にあれこれ言いつけられる。
 洗濯してだ、レンチンしてご飯食べてだ。
 娘も塾や習い事や部活で遅くなる。
 家族揃うのが本当夜10時や11時ぐらいだ。
 団欒には程遠く妻の独演会が始まる。
 自分と娘は家事をやりながらひたすらはいはい聞いている。
 妻は何もしない。昔からコーヒー一つも自分で入れない。他人に任せて味や濃さが気に入らないとぶっかけられる。
 
 一体自分は何のために結婚したんだろう?
 妻と娘のために生きてきてるはずなのに、妻からのギブは何もない。
 
 ――私、家の事ちゃんとするから!

 実母が倒れてピンチの時働くという選択肢が妻の中にはなかった。