丁度見えたもんだから、少し見てしまった。ごめんと謝る。
「いつからなんだ?」
「結婚した時から。付き合ってた時はそこまでじゃなかったけど。尽くす感じだったかな」
 美味しい手料理、優しい笑顔、一緒にいると安心するというか、心地よかった。ワガママでも可愛く感じた。
 彼女を幸せにするなら多少の犠牲も厭わない。
「恋は盲目ってこういうことだね、お父さん」
 悠真棘のあるような口調で陽鞠から言われたが、否定しなかった。

 多分そうなんだと思う。
 結婚時の約束を生涯守り通すと決めたんだから。
 向こうの母親の許しを請うために。
 大好きな娘がいなくなるのが辛いのはわかる。
 自分が親になって、もし結婚したいだ付き合ってる人がいると言われたら、驚きと寂しさが隠せないだろう。
 でもそれは親離れの証だ。もう役目終わったとなるだろう。
 あの母親は一生妻の母親でいたい。可愛い可愛い娘でいてほしいのだろう。
 それを自分が現れたことで邪魔だと思ったのだろう。
 無理難題な条件を出されても、愛する妻のためならとやっていった。
 妻からやいのやいの言われても、家の為にと堪えてきた。そのつけが回ってきてる。

「愛する人のために、こんな身勝手なメッセージ貰ってもやっていくんか?」