突然啜り泣くような声になる結花。
「陽鞠ちゃんが何回も連絡してますよ。メッセージ読んでますか? 私も送ったんですけどね」
『ぎ、気づくの、遅くなって……ちょっとバタバタしてたもんで。っぐっ……今から向かいまずっ』
「ではお願いします」
 通話が終了したので、スピーカーモードをオフにする。
「なんだあの人? 俺が出るとめっちゃ態度変わってたんだけど? ないわー」
 通話中終始穏やかな口調で相手していたが、泣き方が癇に障る。わざとらしい。
「陽鞠ちゃんの時は上から目線なの聞こえてるからな。夫が体調不良というのに、なんだよあの言動は」
「だから言ってるじゃないですか。母は自分の事しか考えてないって」
「もしかしてスピーカーモードにしたのは、俺に聞かせるため?」
 陽鞠は黙って頭を上下した。
「――私、もう母から逃げたいです。父を解放して欲しいです」
 ぽつりと呟いたその言葉は耳に届いただろうか。
「寒いから中に入ろう」
 自動ドアが開いた瞬間、外と中の温度差が二人の体染みた。
 2人が病室に戻ると結花がまだ来てないことに肩を落とす。
 悠真が目覚めた。視線を二人に向けた悠真は「結花は来てないのか」と呟いた。それは残念がるような。
「悠真、お前嫁さんからのメッセージひでーな」