二つのダークな白い吐息④



「…こちらサイドから言えばになるが、ヤクザ組織との提携関係としては、これ以上ない理想的なカタチってことだ。基本はあちらからの依頼事をこっちがこなす。当然、報酬はたっぷり払ってもらう」

「…」

「…その際、あちらからは最大級の”感謝”ももたらされる。何故か…。角度を変えて明かせば、ヤクザという立場なら一番避けたい”仕事”をだ、業界外のガキであるオレ達がしっかりと外注として遂げてやるからだよ。究極の”それ”を、実際にできる人間を使って…。そこでだ、その仕事ができるヤツはだ、今からしっかりと確保しておきたいと。それこそ、先方に対する礼儀と踏んでな。てなことでって訳だよ…」

「では、聞こうか…。連中が一番避けたい仕事で、究極のそれって何だ?」

「殺しになる。そこでのポイントはNGなしでの請負ってことだ。”対象”が女でも幼い子供でも老人、病人でも、仮に時の総理大臣であったとしてもな、”はい、了解!”って。従って、こっちの使う人間は、きっちり完遂できる腕と割り切りが必須となる」

「なるほど‥」

「そうなると、やはり”できる”人間は限られる。何しろ、ヒットに失敗は絶対許されないからな」

「”それ”を、このオレならできると見立ててるのか?」

「受ける受けないは別として、できるんだろう、アンタは”それ”?」

「イエスだ」

黒くディープな”商談”は、きわめて歯切れよく進行して行った…。


...


「じゃあ、条件面クリアなら、やるやらないになるな」

「そうなるが、”今”の即答は無理だ。然るべき判断材料をまずは得て、それから慎重に熟考となる。その前に、判断以前のこっちからの初期条件もあるしな」

「よし、その第一条件、言ってもらえるか?」

「まず、オレは最後まで素性を明かさない。決してな。だから”名前”は以後ずっと、秒殺オオカミとなる。逆に、そっちは全部教えてもらう。それに基づいて、一応調べも入させてもらうしな。まあ、ここが入り口だな」

「わかった。スリーサイズに至るまで曝そう」

「フフフ…、面白いやつだな、お前。なら、スリーサイズはいずれってことで、まず名前…、本名だな」

「大打、オレは大打ノボルだ」

「ほう…、イイ名だ。これは本心で言ってる。…内に向かうでなく、打って出る…。そして昇っていくか…」

この時はオオカミも、左横に首を向け、その乾いた目に風変わりな"スカウトマン"をじっくりと映し込んでいた…。