その4



”麻衣…、オレは辛い。ハナタレのお前が日本中のやくざどもんと正面、オレ達とも正面、テメエ自身とも正面だ‼なのに…、オレはそんなお前の真正面からトンズラだ。クソッ…‼”

彼のフラストレーションは、結果論では、自らを追い詰める負のエンジンと言えた。

不幸(?)にも、その”空気”を、鉄の統率を誇ったチーム大打のモブスターズ仲間…、椎名とタカハシ、そして実弟・武次郎がいずれも、かなり精密に捉えることができたことで、彼ら4人の共同歩調は微妙に変異をもたらし始めていた…。

...


”そのネタ”は、最初に椎名が拾った。
そして、椎名はすぐにタカハシと武次郎に相談した…。

「これは…‼まさにだろう…、なあ、武次郎さん⁉」

「ああ…。行けるな、どう見ても。麻衣の弱点とやらが的外れでなけりゃだが…」

「麻衣の”それ”に、まず外れはないさ。…それで、どうする?ノボルさんには…」

「具申すべきだろうよ、椎名。こんなチャンスはまたとないしよう。兄貴に言やあ、即決だよ」

「そうだ。だからこそ、どうするか…。東龍会へ先にある程度話しをするかしないかもここで決しないと…」

「タカハシ、ふざけんなよ‼兄貴の頭越しで東龍会ってどういう意図だ‼」

武次郎は立ちあがってすごい剣幕だった…。

...


それを椎名とタカハシは顔を見合うこと、数秒間…。
二人はその間、計りあっていた。
しっかりと!

そして…、口を開いたのは椎名だった。

「武次郎…。ここはまず、シビアな話から行くぞ。このネタを組み立てて麻衣を殺るとする…。無論、パーフェクトなら何も問題ない。だが、”足つき”の”何らか”を残せば、かなりの確率で相和会からのリベンジを喰らう。それは、理解できるな?」

「ああ、そんなの、兄貴だって百も承知だろうが!今さら何なんだ、お前ら‼」

武次郎は顔を真っ赤にして、まくしたてた。