「サボるって……この前部活に対して熱い思いを語ってなかったっけ。この間怒ってきたじゃない」

「それはそれ、これはこれ。そりゃあ、部活するときはいつだって本気だよ。やってることに手は抜かない。でも、たまには休憩だって必要だろ?」


 星野らしいと言えば星野らしい考えだった。
 『やると決めたら全力でやる』というのが、彼のモットーらしい。適度に休憩をしながら楽しくバスケをしているのだ。
 ただ、決めるときは決めるのだから、そこが彼の魅力であり憎らしい部分でもある。

 シャーペンを走らせる星野の手元を見つめる。細くて長い指。わずかに浮き出た血管。
ふと男性らしさを意識してしまって、どうしていいか分からなくなった。

 視線を彷徨わせていると、再び「栞」と名前を呼ばれる。慌てて返事をしたけれど、思わず声がひっくり返ってしまい、顔に熱が集まる。
 うつむいたわたしに、小さな笑いが降ってきた。


「お前、なに緊張してんの」

「し、してない。星野相手に、緊張なんてするわけないじゃん」

「あっそ」