「ほら。この書類、明日が締め切りでしょ。ちょっと間に合わなくて」


大丈夫。わたしはちゃんと、笑えてる。

……笑えている、はずだ。


星野はわたしを真正面からまっすぐに見つめている。

まるで嘘を見抜くかのように────否。


「嘘つくんじゃねーよ」


見抜かれて、しまった。

どうしよう、と焦る気持ちとは裏腹に、淡い嬉しさが心の中に生まれたような気がした。


彼はいつだって、わたしの嘘を見抜いてくる。

大抵はそれによって損をすることが多い。

けれどたまに、本当にごくわずかではあるけれど。


気付いてくれて、嬉しいと感じる時がある。


彼は、こうして唯一、わたしの"無理"に気付いてくれる存在だった。