ふっと空気が緩むのを感じる。
気まずい空気が和らいだことに安堵し、ロッカーからとってきた資料本を持ち上げた時だった。
ひらり、と書類の何枚かが床に落ちた。
慌てて拾おうとするけれど、それより先に星野が手を伸ばして素早くそれを拾う。
「なんだよ、これ」
「それは……」
言い淀んでいると、再び射抜くような視線が向けられた。
ドキリと心臓が大きく鼓動して、額に汗が滲む。
言ってしまおうか。
心の内をすべて話してしまおうか。
家に帰って一人でやるのは、苦しい。
わたしばっかりがやらなきゃいけないなんて、嫌だ。
ふと口を開きかけて、慌てて固く口を結んだ。
きっと、話し出したら止まらなくなってしまう。
すべて、声に出してしまう。
もし、取り返しがつかないことになったら遅いのだ。
────過ちを、繰り返すわけにはいかない。