はあ、とため息がこぼれ落ちる。


 だめだ。

 新学期だというのに、ちっとも楽しくないし、むしろ疲労が半端じゃない。


 窓から少し身を乗り出してグラウンドに視線を遣ると、野球部が部活をしているのが小さく見えた。

 野球のルールはいまいちよく分からないけれど、ボールを投げたり、バットで打ったり、塁に向かって走ったりするのでものすごく大変なスポーツであることは理解している。


 もう少し手前に視線を遣ると、そこでは陸上部がトレーニングをしていた。

 後輩らしき女の子に、クラスメイトの河野(こうの)さんが笑顔で何やら話しかけている。


 そうか、わたしたちはもう先輩なのだ。


 改めて実感する。

 初々しく入学したあの日から月日はあっという間に流れ、わたしは今や新入生を迎える在校生の一人となっているのだ。


『お前、俺のこと好きになるよ』


 脳内でリフレインする言葉に、慌てて頭を振った。

 入学式を思い出すたび、こうして流れてくる記憶。


 最悪だ。

 忘れようとしていたのに、また思い出してしまった。