父親に破壊された包帯を、巻き直したい。心理的に俺を守ってくれる包帯を、巻き直したい。包帯を、巻かなければ。包帯を、巻きたい。包帯を、巻かないと。包帯を。早く。

 放心状態だった精神が目を覚ましたように、見えない何かに急き立てられながら自室に入った俺は、四足歩行で机へと向かって。買い溜めしている包帯がしまってある引き出しを開けた。増進させられているのに体がその心理に追いつかず、急ぐことも、その素振りもできないまま、鈍い動きで膝立ちになり、開けた引き出しの中にある、使用されるその時まで眠っている真っ白な包帯を指先で起こした。

 求めていたものを手に収め、その場にまた、女みたいな座り方で腰を落ち着けた俺は、制服を脱いで引きちぎられた包帯を一つにまとめ、それを机の近くに設置しているゴミ箱に捨てた。上半身を覆っていた布が、一切合切、なくなる。

 新品の包帯を開封すれば、あとはもう勝手に手が動いていた。覚えていた。染み付いていた。中学生の頃に初めて包帯を巻き始めてからほぼ毎日、同じことを繰り返しているのだ。慣れて、しまった。包帯を巻くことに抵抗も何も感じなくなって、寧ろ自分の汚れた肌が見えなくなっていくことに満足感すら覚えていて。心が、落ち着く。

 巻いて、巻いて、包帯を巻いて、何重にも巻いて、肌に薄い白布を滑らせて。自分を覆い隠すことに夢中になった。

 夢中になって、夢中になれば、その時間は秒で過ぎていく。胸元から下腹部まで、肩から手首まで。あっという間だった。