獣のような息を漏らす父親が、カチャカチャと俺のズボンのベルトを外して力任せに脱がし、まゆずみまゆずみまゆずみ、自分も同じように露出の範囲を増やした。まゆずみまゆずみまゆずみ。(そそ)り立ったそれを、発情期を迎えてから常に疼いてた俺の後孔に無理やり挿し込もうと、先端が入り口に触れたタイミングで、まゆずみまゆずみまゆずみ、父親のものでない別の影が動き、まゆずみまゆずみまゆずみ、父親を止めようした。まゆずみまゆずみまゆずみ。違う。まゆずみまゆずみまゆずみ。由良だ。由良だった。由良。

「何してるの、やめて、やめて、兄さんを壊さないで」

 今にも泣きそうな声で叫ぶ由良は、どうにか父親を俺から引き離そうとするが、先に引き剥がされたのは由良の方だった。父親が由良を邪魔だと言わんばかりに突き飛ばしたのだ。由良のことはいつも贔屓して、暴力なんて一切振るわなかったのに、それだけ父親が我を失っていることが窺えた。

 やめて、やめて、やめて、やめてやめてやめて、やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください

 父親が兄を襲っている。兄が父親に襲われている。由良にとってそれは、あまりにもショックが大きすぎたようで。彼は床に膝をついて座り込み、青褪めた顔を両手で覆って同じ言葉をひたすら繰り返していた。そんな混沌とした中でも、父親は俺を襲い続けた。やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください