俺の部屋に入った由良が、発情を少しも抑えられない俺をベッドに寝かせた。その際、熱っぽい目をした由良と視線がぶつかり、時間が止まったかのように見つめ合ってしまった。最悪なタイミングだった。無意識のうちにお互いの目を見ないようにしていたのに、よりにもよってベッドの上で、雰囲気作りにはあまりにも最適なその場所で、俺と由良は、性欲を高めたその顔を瞳に閉じ込めてしまっていた。

 吐息が絡み合う。由良の目の色が変わる。苦しそうな呼吸は我慢しようと必死だが、目は口ほどに物を言うのだ。俺も、由良も、きっと、兄弟としてではなく、オメガとアルファとして、本能で、求め合っていた。

 揺らぐ理性の中、由良の手が徐に俺の手を掴み、口に突っ込んでいた指を無理やり引き抜いた。あ、と切なげに漏れた声に煽られたような由良は、俺をシーツに押さえ込み乱れた呼吸を繰り返す。雄になりかけている由良から目が離せない俺は、口を半開きにしたまま物寂しさに泣いていた。指を食んでいたせいか、口が、寂しい。物凄く、寂しい。

 どちらのものなのか分からない熱い息遣いが空気を揺らす。はぁ、はぁ、とお互いにお互いの発情を促進させながら、オメガはアルファに、アルファはオメガに、囚われた。

 必死に堪えている由良の欲望が暴走寸前であることを体現するように、彼はその整った顔を俺に近づけ唇を求めた。そこには、兄を目の前にしたただの弟がいるのではなく、オメガを目の前にしたただのアルファがいるかのようで。今の由良にとっても、俺は兄でもないただの発情期を迎えた淫乱なオメガでしかないのかもしれない。俺は、ただのオメガで、由良は、ただのアルファ。アルファ、だ。由良は、アルファだ。黛と同じ、アルファだ。