黛。黛。黛のせいだ。黛が変なことを教えるから、俺はまた自分の指を口に入れてしまっているのだ。黛のせい。これは、黛のせい。喉の奥を突いて嘔吐き、自ら舌を弄んで喘ぎ、黛に触られていることを妄想して気持ちよくなろうとしているなんて、教えてほしいなんて頼んでもない悪いことや気持ちいいことを強制的に俺に学ばせた黛のせいだ。黛のせいで、覚えなくていいことを、この体は覚えてしまったのだ。

「……黛先輩から預かってるものがあるから、あとで渡す」

「ん、ん……」

 由良の声をふわふわした頭で聞き流しながら、黛よりも小さい自分の指を食んで口内を掻き回す。由良の背中で発情し続け、周りが見えなくなっている俺の目には、気づけば到着していた自宅すらぼんやりとしか映っていなかった。ただの景色みたいだ。

 制服を吐瀉物で汚されても嫌な顔一つしない由良は、文句も言わずに、本当は我慢しているのかもしれないが、親もまだ帰って来ていない無人の家に、俺を背負ったまま器用に鍵を開けて上がった。

 玄関の上がり框に座らされ、靴、脱いで、と指示をされたが、う、ん、と指で舌を弄る行為に夢中になっている俺は、由良の言葉を聞き流すだけで従おうとしなかった。できなかった。

 会話ができなくなるほど乱れてしまっている俺に、それ以上言葉をかけなくなった由良は、一切こちらを見ることなく黙って右足から靴を脱がせ、迅速に用を済ませるように俺を抱きかかえた。一緒に持って帰って来ていたカバンも丸ごと。

 舌。どうしよう。気持ちいい。黛。黛。どうしよう。黛。黛。黛。黛が、悪い。気持ちいい。