顔をぐちゃぐちゃにして醜態を晒しながらやめてと震える俺を無視する彼は、俺の首を絞めるように輪を崩し、そのまま勢い任せに、乱暴に、剥ぎ取った。守られていた首に、冷たく感じる空気が刺さる。剥き出しにさせられた項を咄嗟に手で隠せば、そこは熱く、熱く、火傷しそうなほど、熱かった。期待しているのだ。ここは、俺のここは、馬鹿になっているのだ。心臓はうるさく鳴り響いているのに、体内を流れる血液は瞬く間に冷えていくよう。熱くて、冷たくて、熱いのか、冷たいのか、どっちなのか、分からない。噛まれる。噛まれる。噛まれる。噛まれてしまう。このまま。俺は。噛まれる。噛まれてしまう。ただそれだけが、俺の周りをぐるぐると旋回していた。馬鹿な項は、彼に、運命の番である彼に、歯を突き立てられることを望んで高揚している。パニックに陥っている俺は半べそになって喘いでしまっていた。何もできない。逃げられない。彼から目を逸らせない。

 怯えて震える、昂って震える、麻痺した俺の体を反転させた彼は、後ろから俺の股下に膝を入れ頽れないようにして。項を押さえる俺の手の甲に吐息を当てた。そして、そこを舌先でぺろりと舐めたかと思えば、がぶりと強く噛んでみせる。ぞわぞわとした気持ち悪い感覚が、でも、興奮を煽る痺れるような感覚が、背中を撫でて腰を揺らし、秘めた中心部を、うねる中を、熱くさせた。気力を奪われるように力が抜けていくのを阻止できない。その隙を彼は逃すことなく俺の手を剥ぎ、壁に押さえつけて。首の後ろ、露わになったオメガの急所、まだ、誰にも噛まれたことのない部位、そこに、顔を埋め、唇を押し当て、口を開き、歯を、アルファの歯を、突き立てた。手の甲に噛みついたように。傷を作り始める。あ、あ、と声にならない声が漏れ、涙が溢れ出す。涙が止まらない。や、だ、やだ、と重くなっていた舌が動き、涎が零れる。涎が止まらない。