徹底的に水で洗われ、いや、洗うというよりもぶつけられると言った方が正しいだろうか。そのうち狂乱してしまいそうなほど責められ続け、水圧や服の重みに耐えかねそうになる。でも、座り込むわけにはいかない。我慢しなければ、彼の機嫌はよくならない。顔色を窺ったって、番にさせられてしまうことに変わりはないのに。

 着衣のままシャワーを浴びたのかと思うくらい全身が濡れそぼち、衣服やその下の包帯が肌にへばりついて空気の通り道がほとんどなくなったところで、ようやっと気が済んだらしい彼が、最後に自分の服を濡らした。僅かに付着していた俺の吐瀉物を水で落とし始める。自分も、綺麗でなければならないのだろう。

 散々使ったバケツを手放し、最高潮に達し始めている興奮で涎でも垂れてしまうのか、彼は口元を拭いながら俺に目を向けた。雄の目をしている。凶暴なアルファの目をしている。そんな、オメガを食うだけのアルファが、一歩一歩近づいてくる。何も言わずに、近づいてくる。これから番になるための儀式を行うつもりなのだ。俺の首輪を剥いで、俺の項を噛んで、俺を番にするつもりなのだ。その一連の流れが瞬時に想像できてしまい、俺は半泣きになりながら、でも彼から目が離せないまま、ごめんなさい、ごめんなさい、やめてください、やめてください、と説得力のない吐息を漏らして懇願していた。俺の運命はこの人だとしても、俺が番にすべき人はこの人じゃない。ダメだ。ダメだ。この人は、ダメだ。だめだ。だめだ。ごめんなさい。やめてください。

 運命を求める彼の手が、動く。オメガを欲しがる彼の手が、伸びる。動いて、伸びて、あ、あ、と混乱する俺を脅かし、首輪に触れる。逃げないと。逃げられない。退けないと。退けられない。あ、あ、あ、ごめんなさい。やめてください。たすけて。たすけてください。