不規則に揺れる車。安定しない場所であってもお構いなしに俺の体に触れる男たち。やめてくださいごめんなさいゆるしてください。その手が、抵抗できない俺の制服を捲って胸をはだけさせると、意表を突かれたかのようにピタッと動きが止まった。あ、あ、見ないで。見ないで。見ないで見ないで見ないで。やめてくださいごめんなさいゆるしてください。が、それは一瞬で、特に冷めることもなく、寧ろ燃え上がるように、手は皮膚を覆っている包帯の線をめちゃくちゃに壊し始めた。あ、やだ、やだ、やだ。やめてくださいごめんなさいゆるしてください。包帯巻いてるとか、なんか、えっろ、と唆られたように息を吐く男に、壊され、殺される。あ、あ、崩れる。崩れる崩れる崩れる。やめてくださいごめんなさいゆるしてください。

 中途半端に制服を脱がされ、包帯を壊され、露出した肌と涙で濡れた顔を撮影される。俺の体を押さえ、そうしながら卑しく触るいくつもの手に気が狂いそうだった。もう何も考えたくない。もう何も感じたくない。誰も来てくれない。助けなんて来ない。あの時のように、都合よく黛が来るはずもない。この車の後部座席は、外から中は見えないのだ。おまけに普通に走行している。黛は来ない。黛。黛。来ない。彼は。来ない。来られるはずもない。

「うっわー、痣だらけじゃん。鳴海くん、誰かに暴力振われてるんだ。でもそれが同意の上だったら、鳴海くん相当なマゾじゃん。今も自由奪われて触られて、ハメ撮りまでされて、嫌がってるけど本当は期待してるんでしょ。下半身触れば分かるな」

 やめてくださいごめんなさいゆるしてください。思考の邪魔をするようにリフレインする命乞いは、きっと最初からそのつもりで俺を拉致したであろう彼らには届かなかった。