「……せっかくだし、このままハメ撮りしよっか。雪野(ゆきの)に送る写真撮ったついでにさ」

 鳴海くん、今度は動画、撮らせてよ。ね? 有無を言わさない圧を感じ、スマホを構えたままの男の手がいやらしく頬をなぞった。体が強張り、ビクッと肩が上がる。あ、やだ、やめて、ください、やめてください、と消え入りそうな震える声で目の前の男にもそうだが、それ以上に、あの三人よりも強烈に残っている記憶の中の父親に訴えかけた。現実が見えていない。男と父親が重なる。重なって、発狂しそうになる。

 は、ひ、と呼吸がおかしい俺の姿すら興奮する材料なのか、男はへらへらとした表情を崩すことなく、早速動画撮らせてもらうから、はい、スタート、とピコンと音を鳴らしたスマホを俺に向けると、頬をなぞっていた手で首輪に触れ、滑らせ、その手を襟元へと移動させた。きっちりと締めていたネクタイを解かれ、片手でボタンを外される。小さく喘ぐ俺の耳に、周りの囃し立てるような野太い声が反響して聞こえた。声は違うのに、俺を見下ろす全員の顔が父親に見えてしまい、やめてください。ごめんなさい。ゆるしてください。混乱した頭の中はそればかりになっていた。やめてくださいごめんなさいゆるしてください。やめてくださいごめんなさいゆるしてくださいやめてくださいごめんなさいゆるしてください