国際法で義務付けられているバース検査で、オメガだと確定されたその瞬間、俺の人生の道標は良くない方向に曲がった。満10歳だった。

 アルファ家系で育った両親は、その診断結果を疑い、俺に何度も検査を受けさせたが、結果は何も変わらない。オメガの文字が、それを示すアルファベットが、現実を色濃くさせて。それに脅かされた両親が狂うだけだった。

 出来損ない。

 期待外れ。

 裏切り者。

 私たちの子供じゃない。

 どうしてアルファじゃないんだ。

 オメガはいらない。

 溜息を吐き、怒りを露わにし、俺の目の前で幻滅する両親を見て、子供ながらに理解した。オメガであることは悪いことなのだと。

 その日を境に、両親は俺に対して冷たく当たるようになった。そして、嫌味たらしく、年子の弟に深い愛情を注ぐようになった。それもそのはず。弟は、出来損ないでも期待外れでも裏切り者でもない、正真正銘のアルファなのだから。

 弟の方が賢かった。弟の方が動けた。弟の方が体躯がしっかりしていた。弟の方が身長も高かった。弟の方が男らしかった。弟の方が優れていた。弟の方が愛されていた。弟の方が──

 後から知った話。アルファ同士の親からオメガが生まれる確率は、1%だと言われているらしい。俺はその1%の確率で生まれたのだ。アルファに拘泥する両親が発狂するのも無理はないと納得せざるを得なかった。