その窓は、わたしのお気に入りである。

 陽光がやさしく射し込んでくるし、月光がさらにやさしく降り注ぐ。

 なにより、景色が素晴らしい。

 演習場とその横手に広がる森の景色は、一日眺めていても飽きることはない。

 最初は、侍女が使うべき当然の部屋みたいな思いで掃除をして使いはじめた。だけれ、いまではここにしてよかったと大満足している。

「なにも見えない」

 彼は背を向け、窓の桟に体重をかけて外の夜の闇を見つめている。