王宮(ここ)から、一刻もはやく出て行きたい。

 手段なんてどうでもいい。馬車であろうと荷馬車であろうと、どうせおなじなのだから。

「すでに荷物は積んであります」
「少ないのに驚いたのでしょう?」
「え、ええ」

 ずばり当てられ、彼ははにかんだ笑みを浮かべた。

「妃殿下、これを」

 軍の宿舎は、王宮に隣接している。演習場があり、そこで行事がある度に行軍が行われる。わたしも、前夫の横に立ち、何度か観覧したことがある。