当然、向こうもわたしを見ている。

 美しい顔に、一瞬だけ何かがあらわれたような気がした。それが何かはわからない。はたして、あらわれたかどうかも。陽光で陰影になっている。感情のあらわれのようなものは見えにくい。

「将軍閣下っ!いくらなんでも、いまのはひどすぎます」

 ロランの大きくはないけれど鋭い声が耳に響いた。

 彼が兄のことを「兄上」ではなく「将軍閣下」と呼んだのは、意味があるのかしら。

 そんなどうでもいいことをかんがえてしまう。