「リン、いったいどうしたんだ?」
「イヤよ。イヤ……」

 頭を左右に激しく振り、お兄様の左手を払いのけようとするも出来るわけがない。

「はなして。はなしてよ」

 わたしの顔色は、お兄様のそれよりも真っ白に違いない。

 逃げたい。お兄様とはいっしょにいたくない。

 クロード、助けて。お願い。わたしを、わたしを助けて。

「急にどうしたんだ?」

 お兄様も立ち上がった。彼の顔が右腕のケガによる苦痛に歪んだけど、それも一瞬だった。