「ブルルル」

 いつの間にか、お兄様の馬が顔を近づけていた。

 鼻を鳴らしてから、その鼻を頬に押し付けてくる。

 鼻のフニフニ感がたまらなく気持ちがいい。

 頭上では太陽が地上を睥睨し、容赦なく陽光を浴びせている。

 だけど、それも左右にある木々の枝葉にはかなわない。木々の奥の方は、陽光が届かず真っ暗である。

 小鳥たちの呑気な囀りがきこえてきたかと思うと、違う方角からは羽ばたきがきこえてくる。

「大丈夫だ」

 お兄様がわたしの手を振り払うようにして右腕をひっこめた。