どいてから驚いてしまった。

 お兄様の右腕が、厳密にはグレーのジャケットの袖にシミがついている。しかも、そのシミはじょじょにひろがっていっている。

 彼が腕をひっこめるよりはやく、その腕をつかんだ。

「つうっ」

 お兄様の渋美しい顔がゆがんだ。

 その表情に目を向けてしまったので、すぐには気がつかなかった。