王宮でも生まれ育った屋敷でも、まわりには常にだれかがいるのが当たり前だった。だから、こんなにだれもいないという環境が、ちょっとだけ新鮮に思える。

 そんなわたしにお構いなしに、ロランは書斎の扉をノックした。

「兄上、ロランです。王都より戻りました」
「入ってくれ」

 即座に返事があった。その声は、意外と明るくさわやかだった。

「どうぞ」

 ロランは扉を開け、自分は脇にどいてわたしに譲ってくれた。

 心臓が口からポンと飛び出してしまいそう。