「リン……」

 これまでずっと背中を見せていたクロードがこちらに体ごと向き直った。

「クロードッ!」

 その瞬間、お兄様が右腰の戦闘用ナイフを鞘から抜いたのが、クロード越しに見えた。

 抜いたのが見えたときには、体が動いていた。

 なにもかもが一瞬だった。

 クロードの名を呼んだのと、その彼の横をすり抜けてお兄様の前に飛び出したのが同時だった。

 戦闘用ナイフの刃先が、分厚くてギザギザしているのがはっきり見えた。