彼は、目の前のお兄様を睨みつけたまま振り返らず、凄みのある声で言ってのけた。

 クロードの突然の豹変ぶりに、お姉様の薄汚れている美しい顔に驚愕の表情が浮かんだ。

 だけど、マリユスの美しいけど汚れきった顔には、事態がまったく把握出来ていないポーッとした表情しか浮かんでいない。

「レオナール。あなたの言う通りだ。おれは、ずっと演じてきた。それで?おれは、あなたの問いにどう答えればいい?どう答えれば、あなたは満足するのか」