「そうだわ。そうよ、そうだったわ。お兄様、もともとマリユスの妻はリンだったのよ。リンが妻にふさわしくない、というのでわたしがかわりになってあげたの。だから、マリユスとリンを連れて帰ったらいいわ」

 はいいいいい?

 開いた口が開かないとはこのことね。

 お姉様は、人間(ひと)として終わっているみたい。

 そんなお姉様に、何も言う気も起こらないわ。

 お兄様は、そんなお姉様のことも無視することにしたみたい。

 一瞬だけ、彼女に一瞥をくれただけだった。