「ディアーヌ、わが妹よ」

 お兄様は、長椅子の横をまわってこちらに向かってきた。わざとらしく、腕を広げている。

 そのタイミングで、クロードがわたしの前に立った。

 わたしを守るかのように。

「それは誤解だよ、ディアーヌ。王太子と王太子妃を殺すのは、わたしが行うことではない。それは、民衆が決め、斬首人が実行する。わたしは、そのお膳立てをするだけさ」

 やわらかいと思っていた笑みは、いまでは鋭く陰湿なものにかわっている。