お姉様も元夫のマリユスも、生きのびる為にどんなことでもして逃げてきたに違いない。それこそ、肥溜めに落ちたりゴミを漁ったりしながら。

 だからといって、彼らに同情するつもりはない。

 いいえ。同情なんて出来やしない。

 わたしは、たまたまここにいたから難を逃れたにすぎない。

 マリユスに離縁されず、あのまま王都でいたたまれない思いをしながらでも生活していたら、おなじ目にあっていたでしょう。

 いいえ。王都から逃げだすことすらしなかったかもしれない。