「兄、ですか?まぁぼくが説明するよりも、ご自身で確かめていただいた方がいいかと」

 わたしの問いに対するロランの回答は、じつに謎めいていた。

 っていうか、答えたくないというわけね。


 国境地域を守護している軍の拠点だというから、てっきり要塞があって「これぞ国境」という厳粛で強固なイメージを抱いていた。

 だけど、それはいい意味で裏切られた。

 湖があって森があって山があって草原があって畑があってと、のどかきわまりないところだった。

 それだけではない。隣国との交易の場でもあるので、街そのものは大きくて活気がある。

 すくなくとも、王都からここにいたるまでに通過してきた町や村とは、比較にならないほどの規模である。