「しばらく、このままでいてくれないか」

 彼は、一呼吸おいてから続けた。

 わたしに異存があるわけもない。

「ええ」

 かろうじてその一言が唇の間から落ちた。

 彼にきこえたかどうかはわからない。

 わたしたちは、しばらくそのままの状態でおたがいの存在を感じ合い、ぬくもりを分かち合った。