「そこからが記憶がないのよね」

 ハアッと溜息が出てしまう。

「お兄様が剣を握っている方の腕を上げたのは。見えた気がするの。その後、強い衝撃があったような気もする。気がついたら、自分の寝台の上だった。左腕が包帯でグルグル巻きになっていた。両親からは、わたしがお兄様にふざけてぶつかってしまい、たまたま剣がわたしの左腕をかすったってきかされた。お兄様は戦地に戻った、とも。お兄様は、それからすぐに行方不明になったの」

 苦笑しつつ、視線を左腕から眼前のクロードへと戻した。