一瞬、抱き寄せられるのかとドキッとした。こんなときなのに。お兄様の話に衝撃を受けているというのに。

 彼と見つめ合う。

 彼の瞳に映っている自分が怯えているように見える。

 それがお兄様のことに対してか、あるいは彼に対してかはわからない。

 彼の手に力がこもった気がした。が、結局、彼はわたしを抱き寄せなかった。