三度目の黒塗り高級車の中は、私の啜り泣く声が車内に密かに溶け込んでいった。


 
 なんていうか、何で私が泣いてるのかは意味が分からないけれど、それぐらいに恐ろしかったのだ。



 失うモノが無いと思ってたけれど、いざ危機感を感じ、覚えてしまうと色んな感情がこみ上げてくる。




 “セフレ”という直ぐに切り離せる身体だけの関係を主に、異性の関係を構築してきたが....

 

 意外と危ない橋の上を渡っているのかもしれない。






 でもね、一つだけ文句を言えるとすれば....





「アンタが来なきゃ、こんな事にならずに済んだのに....。」


 ただそれだけに尽きる。




 一度ならず、二度も私の邪魔をして、セフレ君たちに俺の女発言を繰り返す糞野郎め。



 ケンちゃんといい、ヒナタ君といい....彼等の中では、私に男が居るという認識をされてしまった。



 大事な大事な、私の欲を満たしてくれる存在が.....



 あれ?彼等ってそこまで大事なのかな。と疑問符を浮かべられる位に冷静になった。







「五月蠅いな、お前が大人しくしていれば、こんな事せずに済んだんだよ。」




 あゝ言えば、こう言う。とは実にこの事。




 確かに、私がしている事は最低だけど、それよりも私の人生を邪魔するこの男こそ、もっと最低なんじゃないかな。と思うのよね。




 なんだか最近、詠斗に振り回されて、この男の事ばかり考えてしまっている自分が馬鹿馬鹿強い。




 確かにあんたの童貞を奪ってしまったことは申し訳ないと思うよ?


 相当大事に取ってたんだろうね。


 じゃなきゃ、こんなに私に執着なんかしないだろう。




 まるで、最愛の人に処女を捧げた乙女の如く。


 いつまでも忘れられない相手....。初恋の......。