しばらく、二人の間に沈黙が流れた。

私は、私の気持ちを隆盛に分かって欲しかった。

隆盛を傷つけたくはなかった。

…すると。

「…変わったよな、星野。…本当に変わったよ」

と、ポツリと隆盛は言った。

「三珠と出会ってからだ。前の星野じゃなくなった」

「…そうかもね」

私も、そう思う。

以前の私だったら、結月君みたいな人とと付き合うなんて考えられなかったものね。

もしかしたら、隆盛からの告白を受け入れてたかもしれない。

そんな未来も、あったのかもしれない。

だけど、隆盛の言う通り、私は変わった。

以前の、幼稚で愚かだった頃の私じゃなくなった。

人を傷つけて、自分も傷ついて、そして変わった。

隆盛は多分、以前の私の方が良いと思ってるんだろう。

でも私は、今の私の方がずっと好きだった。

「…分かったよ。…もうしつこく言わない。星野のことは諦める」

隆盛はそう言って、ネックレスの箱を持つ手を降ろした。

彼の悲しそうな顔に、思わず謝ってしまいそうになった。

でも、謝罪などして隆盛の面目を潰す訳にはいかなかった。

「…あいつは星野と釣り合わないって、今でもそう思うけど…。でも星野がそこまで言うなら…諦めるよ」

「…うん」

「いつか気が変わったら…。…目が覚めたら、声をかけてくれ」

…目が覚めたら、か。

つまり私は今、盲目だと思われてるのね。正気を失ってると。

確かに以前の私だったら、結月君と付き合ってるなんて、正気を失ったとしか思えないでしょうね。

でもね、それは逆なのよ。

恋は盲目と言うけど、私の場合は逆だった。

恋はむしろ、私の目を覚まさせてくれたのよ。

だから私は隆盛と付き合うことは出来ない。

申し訳ないけど、それだけは無理だった。