――――――…間近に迫っているらしい、唯華さんの誕生日。

さて、僕は何をしようかと、試験勉強の合間にあれこれ考え。

「…やっぱり、あれにしよう」

結局、最初に思いついたものに落ち着くことになった。

…そうと決まれば、準備を始めないと。

僕は立ち上がって、母の仕事部屋にお邪魔した。

「ごめん、ちょっと入るね」

「あら、どうしたの?」

丁度、母は着物の仕立てをしているところだった。

仕事中だったらしい。

じゃあ、長居は出来ないな。

「端切れもらっても良い?ちょっと作りたいものがあって」

「作りたいもの?良いけど…。何を作るの?」

「それは…ちょっとしたもの」

何となく、口にするのが気恥ずかしくて言えなかった。

幸いなことに、母もそれ以上は聞かなかった。

「そう?…いつもの場所に端切れを入れてあるから、好きなものを持っていって良いわよ」

「ありがとう」

僕は、端切れを入れてあるタンスを開いた。

さて、欲しい布はあるかな、っと…。

なかったら買ってこないと。

どうせ金具の部分は、手芸屋で買わなきゃいけないんだし…。

すると、何を思ったか。

端切れを漁る僕の背中に、母がとんでもない質問を投げかけてきた。

「…ねぇ、もしかして」

「はい?」

「星野さんへのプレゼント?」

タンスに頭ぶつけるかと思った。

危なかった。

「な、何で…?」

「いや、そうかなぁと思ったから。…やっぱりそうなの?」

やっぱりって何ですか。

「…そういうのじゃないですよ…」

「あら。それは残念」

何で?

「たまに休みの日に出ていくし。何だか色んなもの作ったりしてるから、星野さんかと思ったの」

当たってるけど。

何で僕が休日に出掛けたり、色々料理を作ってたりすると、唯華さんが関係していることになるのか。

「まだ仲良くしてるんでしょう?」

「…お陰様で…」

「良かったら、またうちに連れてきてね」

「…」

何だか妙ににこにこしている母の顔を、見ないようにしながら。

僕は早いところ用事を済ませようと、目ぼしい端切れを探した。