結月君と二人で、歩いて帰りながら。

「…さっき聞こえちゃったんですけど」

と、結月君が切り出した。

「え?何?」

「唯華さんって、もうすぐ誕生日なんですか?」

あ、聞こえてたか。

まぁ良いや。彼氏にも知っておいて欲しいよね。

「うん。3月の下旬なの」

「そうですか…。…何かしてあげたいですけど、先に学年末テストなんですよね」

「うっ…。それは思い出させないでよ」

「いや、テストは大事でしょう」

ごもっとも。

私も今年は、少しくらい真面目に勉強…。

…しようと思いながら「やっぱり来年頑張ろう」と全てを諦めてしまう現象が、毎年起こってる。

「何か欲しいものってあります?」

「結月君のセンスに任せるわ」

と、私は真菜と海咲に言ったことを、結月君にも言った。

何なら、結月君って私よりセンス良いから。

結月君のお任せにした方が、嬉しいプレゼントをもらえそうな気がする。

「成程、そう来ましたか…」

うんうん。そう来る。

「…試験勉強と並行するので、大したことは出来ないかもしれませんけど…。努力はします」

「うん、そうしてくれると嬉しいな」

「…それと、ケーキ作りますよ。何ケーキが良いですか?」

え、マジで?

ケーキ作ってくれるの?

彼氏に誕生日ケーキを作ってもらうなんて、女の子の夢だよね。

「そうだな〜。うーん…」

ここは、やっぱりスタンダードにデコレーションケーキ?

それともガトーショコラとか?チーズケーキも良いよね。

あるいは…パイやタルト系?アップルパイとか、いちごのタルトとか。

いやいや。

「んー。結月君に任せる!」

「…またですか…」

うん、まただよ。

私は誕生日だから、もらうだけ。

ぜ〜んぶ結月君にお任せ。

「大丈夫だよ。結月君の作るものなら、何でも美味しいから」

「そう言ってもらえるのは有り難いですけど、僕、洋菓子を作るのはそんなに得意じゃないので…。…あんまり期待しないでくださいね」

またまた〜。

この間のおからクッキー、めちゃくちゃ美味しかった癖に。

「うんうん。期待してるから宜しく!」

「…」

そんな、苦虫を噛み潰したような顔しないで。

今から誕生日が楽しみだな〜。