「待ってろ」
修平は珍しく低い声を出して、靴を脱ぎ、私を玄関に置いて私の部屋の中に入っていく。

少しして戻ってきた修平の手には救急箱。

場所も中身も熟知しているのは、この救急箱を買って、中身をそろえて私の部屋に置いた張本人だからだ。
「かして」
修平が手を出す。

「大丈夫。仕事送れる。」
「大丈夫。まだ時間ある。いいからほら。」
強引に私の手をつかむと、修平は私が巻いていた絆創膏を慎重にはがす。

また自分のケガのように痛そうな表情をしながら、修平は私の指を消毒して、新しい絆創膏を貼る。
強引に手当てをはじめたのに、手当てをする手からは優しさしか伝わらない。