危険だということは私も身をもって実感した。


異常な程の愛に
殺されるかもしれない怖さ。

ここにいる限りはその恐ろしさからきっと逃れられない。


だったら。

考えるまでもなく、
彼について行けばいいだけ。



「ちょ…ちょっと待って、」



なのに私は簡単に頷けなかった。



「一花さんは…どうなったの?」



寧ろ先に、彼女のその後が知りたかった。


春が不機嫌になってしまっても。



「………一花はあのまま家にいる。橋本さんも今その場にいるから今頃話を進めてると思う」

「何の話を?」

「一花を警察に突き出すかどうか。…あんなことをしたんだ。俺達はもちろん突き出すつもりでいる。
けど、まだ証言が無いからって向こうの事務所のヤツらが反抗して上手く話が進んでいないらしい。」

「証言って、私の?」

「うん。でも無理に話す必要ないよ。
証言が無くたって勝ち目はあるから。」



目ではなく、春は私の首元を見ながらそう言った。


もしかしたらそこに締められた痕があるのかもしれない。



(警察……)



………当たり前だ。


あんな事をしたんだ、許されるわけがない。


もうずっと牢獄の中にいればいい。


それ以上に苦しい想いをすればいい。



普通の人なら誰もがそう恨み、願うはず。



「…いい」



だけど



「警察には言わなくていい」



やっぱり私は普通じゃないみたいだ。



その言葉をハッキリ口にすると春の瞳が分かりやすく丸くなった。



当然驚くだろう。



あんなことをされた後だというのに

私は今、彼女を守るような事を言っているのだから。