近づいて来る一花さんは濡れた床の上を気にせず歩く。


足が濡れようと、今の彼女には全く気にならないのだろう。



「…全部全部アンタのせい。アンタさえいなければ、アタシと春は今でも仲良くいられたはずなのに」



迫り来る一花さんに私は床に座ったまま後ずさる。



「アンタと結婚してから付き合いは悪くなったし、挙句の果てにはアタシを避けるようになった。」



けど、私と同じ高さにしゃがんだ一花さんにズボンの裾をキュッと掴まれてしまった。


狂気に満ちた目。

口調も表情も、本屋で会った時とは違う。




「いっそのこと、アンタが死んでくれたら全てが丸く収まると思わない?」




これが本当の一花さんの姿なんだと知った。



グッと足首を掴まれた瞬間、全身で恐怖を感じ取る。



やばい。

この人は異常だ。

普通じゃない。



春に対する想いが度を超えてる。