「何したの?」

「ちょっとした設定をしただけだよ」

「なんのよ」

「なんだろうね?」

「………………」

「さ〜て。約束通り帰ろっと」



睨む私から逃れるように背を向けた春。



まあもういいか…と。

私もそのままドアを閉めようとした。が。



「じゃあね。」

「………………」



去っていく春の背中を見つめていると


夜だからかな。

無性に恋しくなって、寂しくなって。


私は小さく開けていたドアを全開にして
春の元に駆け寄った。



「春」



小声で

バレないように


振り返った春の唇に背伸びをして触れ合わせた。


驚いた様子はなく、無表情の春。



「しないんじゃなかったの?」

「見られなかったらバレないんでしょ」

「………………」

「………………」



瞳を、合わせて。



「凛」

「なに」



無表情ながらも、見惚れてしまう顔立ち。


そんな彼の手が頬を優しく愛撫する。



「1分だけ。声我慢して」



低い声のトーンが耳に響いた。