「バレないとかじゃなくて、しないったら」
負ける前に、春の口元を手で塞いだ。
そのままグッと押し込んで距離をとる。
「頑固だなぁ…」
「どっちが」
落ちた服をまた拾い集めると、春も一緒になって拾い集める。
「これ由紀子さんの?」
「うん。貸してくれた」
「ふーん」
「………なに」
服を畳む私をジッと見てくる。
「俺の服着れば?」
「替えの服あるの?」
「ないけど」
「(ないのかよ)」
「相手が女でも……ちょっと嫌だな」
一体何のことなのか分からず、春に視線を向ける。
私と同じようにその場にしゃがんでいる春は
自身の膝に頬杖をついていた。