隣の部屋のドアから顔が、体が現れて、全身を捉えたときには、心臓が止まるかと思った。
息をすることなんて忘れた。その場に固まってしまった。



____現れたのは、黒髪で背の高い男の子。



同じ制服なのに、田邊とは違ってブレザーをきちんと羽織っていて、ボタンもきっちり一番上前までしめられている。ネクタイだって、しっかり結ばれている。


見るからに模範生で、田邊がいるから余計にそれが目立つ。


隣から出てきた人を見て固まってしまった私を見て、私にしか聞こえないように田邊が耳打ちする。



「誰?知り合い?」



それにも私は何も返せずに、ただ真っ直ぐに、目の前のその人を見つめることしかできなくて。


その人も私の視線に気がついてこちらを見て、目が合って、一瞬驚いたように目を丸くしたけどすぐに無表情に戻った。何を考えているのか表情から全く読み取れなくて。




……まさかこんなところで再会するなんて思わなかった。