そう考えていたら、各テーブルを周っている男性が目についた。



 嘘でしょう……。
 どうしてカーティスがここに居るのか、直ぐには理解出来なかった。



 そうだった、ここは『アフロデリア』だ。



 この店の名前をスコットから聞いた時、胸が疼いた。
 どうして思い出させる様に続くの、と引っ掛かっていた。


 ……あの頃よく目にしていた、もう開くことも少なくなった詩集。
 その中の詩の1篇を、卒業式の前日カーティスから最後に送られた。


『アフロデリア』
 そのタイトルが、このお店の名前だったから。
 男性が故郷に残してきた恋人を想う詩で。
 アフロデリアは、その女性の名前。



 彼が各テーブルのお客達に挨拶をしていた。
 このお店は、彼の家が開いたレストランだったんだ。


 こんなに早く、また会うとは思っていなかった。
 彼に会った腹立ちと、認めたくない少しの嬉しさと。

 今日はそこそこ綺麗な格好をしてきて良かった、と思ってしまう自分が情けなかった。