クリスマス前に始まった冬休みもおよそ半分が終わってしまった新しい年の初めての日、家族で近所の神社へいった。家族連れや恋人らしき二人組がたくさん見られる。みんな、軽装でも綺麗な格好だったり、和装している人も少なくない。
わたしの格好はといえば、とにかく寒いので、ニットワンピースに厚手のコート、首にはマフラー、足元はブーツという厚着も厚着で、着ぶくれしているなんてものではない。正確には裏起毛のズボンまで穿いている。
お祓いを済ませて、お清めのお酒はお父さんに飲んでもらった。
さていよいよおみくじをというときだった。お母さんが「トイレってあるのかな」といった。「駐車場の方にあったよ」とお父さんが答えて、お母さんは「ちょっといってくるね」といって歩いていった。それを見送ったお父さんは、なにやらそばにくると「俺もいってくる」といい置いてそちらへいってしまった。
白い息を吐き、お焚き上げの火にでもあたってこようかと考えてみると、「はな?」と聞き慣れた穏やかな声がして、寒くて震えていたような体がぽっとあたたかくなった。
振り返れば、声の主は想像していた通りの人だった。「水月!」と声が大きくなる。彼も白っぽい色のマフラーを巻いているけれど、それは彼のまとう雰囲気のためにマフラーというよりも襟巻きという感じがする。
「おめでとう」と微笑む彼に「おめでとう」と答える。こういう場では、和装の彼はまるで幻想物語のずっとここにいる不思議な少年といった感じがする。きつねのお面や目元を隠す白い布地でもあれば、もはや自分と同じ世界に暮らす人間とは思えない。顔や目元が隠れていても美しさ儚さの滲む不思議な少年。
「一人?」という水月に「ううん、お父さんとお母さんと」と答える。
「二人でトイレですって。水月は?」
「葉月は友達に遭遇して屋台の方、父さんはあっちの花の苗とか売ってる方に、母さんはお守りを見てる」
「愉快な家族だね」とわたしは笑った。
ふと水月の手元に紙コップがあるのに気がついて、「それは?」と尋ねる。
「甘酒。お守りのテントに沿っていったところ、御神木の前にテントがある」お礼に百円置いてきた、と彼はいった。
「いってこようかな」といって一歩踏みだすと、水月は静かに下駄を鳴らしてついてきてくれた。なんだか嬉しくなって笑うように吐きだした息が、さっきよりも白くなった。体がぽかぽかする。
「いい年になりそう」といってみると、「俺もそんな気がする」と返ってきた。
わたしの格好はといえば、とにかく寒いので、ニットワンピースに厚手のコート、首にはマフラー、足元はブーツという厚着も厚着で、着ぶくれしているなんてものではない。正確には裏起毛のズボンまで穿いている。
お祓いを済ませて、お清めのお酒はお父さんに飲んでもらった。
さていよいよおみくじをというときだった。お母さんが「トイレってあるのかな」といった。「駐車場の方にあったよ」とお父さんが答えて、お母さんは「ちょっといってくるね」といって歩いていった。それを見送ったお父さんは、なにやらそばにくると「俺もいってくる」といい置いてそちらへいってしまった。
白い息を吐き、お焚き上げの火にでもあたってこようかと考えてみると、「はな?」と聞き慣れた穏やかな声がして、寒くて震えていたような体がぽっとあたたかくなった。
振り返れば、声の主は想像していた通りの人だった。「水月!」と声が大きくなる。彼も白っぽい色のマフラーを巻いているけれど、それは彼のまとう雰囲気のためにマフラーというよりも襟巻きという感じがする。
「おめでとう」と微笑む彼に「おめでとう」と答える。こういう場では、和装の彼はまるで幻想物語のずっとここにいる不思議な少年といった感じがする。きつねのお面や目元を隠す白い布地でもあれば、もはや自分と同じ世界に暮らす人間とは思えない。顔や目元が隠れていても美しさ儚さの滲む不思議な少年。
「一人?」という水月に「ううん、お父さんとお母さんと」と答える。
「二人でトイレですって。水月は?」
「葉月は友達に遭遇して屋台の方、父さんはあっちの花の苗とか売ってる方に、母さんはお守りを見てる」
「愉快な家族だね」とわたしは笑った。
ふと水月の手元に紙コップがあるのに気がついて、「それは?」と尋ねる。
「甘酒。お守りのテントに沿っていったところ、御神木の前にテントがある」お礼に百円置いてきた、と彼はいった。
「いってこようかな」といって一歩踏みだすと、水月は静かに下駄を鳴らしてついてきてくれた。なんだか嬉しくなって笑うように吐きだした息が、さっきよりも白くなった。体がぽかぽかする。
「いい年になりそう」といってみると、「俺もそんな気がする」と返ってきた。