本日何度目かのiPhoneチェックに、本日何度目かの溜息をついて、体の中に取り入れたくないアプリコットフィズの代わりに、アルコール度数なんて一切ない、ただのデトックスウォーターで口の中を潤す。
ほんのり広がる清涼感のある味が、舌を洗って鼻に抜けていく感覚はたしかにあるのに、自分の中にある毒性は出ていかないどころか、1秒、また1秒と、浸食して私を蝕んでいく。
そんな状態でも、残るのはいつも、純粋なたったひとつだった。
「…会いたいなぁ」
真琴に絶縁されてから、あっという間に1年半が経とうとしているのに。
”会いたいのに、会えない” というくるしさに、いつまで経っても慣れない。
特に、今日みたいな日は。
デトックスウォーターの入ったグラスを手のひらで転がしながら、さりげなく店内を見回してみると、おしゃれタウンのおしゃれバーらしく、カップルみたいな人達が多くて、なんでこんなところにのこのことひとりで来ちゃったんだろうと、余計にむなしくなる。
もっとバーは、おひとりさまにやさしくあるべきだ!なんて、あのヒトと一緒にくるときとは、恐らく正反対の不満を心の中でつぶやいて、ふたたびメニューに手を伸ばす。
今の私には飲めるはずもないアプリコットフィズを端によせると、誰かの気配を感じて、弾むように右側をみる。
「アイツだと思った?」
「…っ!」
よく考えれば、においが全然違うのに。
自分でもわかるくらいに ”女” の顔をしてしまったあと、遠慮もなく落胆をにじませてしまった。