「俺よりいい人だとか優しそうだとか言ってただろ」

「だからって好きだとは言ってないじゃないですか。勝手に解釈して早とちりするくせに、変に拗ねるのやめてください」

「す、拗ねてねーわ。俺はアドバイスしてやってんだ。むしろ誤解されるような言い方したお前のせいだろ」

「人のせいにしないでくださいよ。そもそも誤解したところで先輩とはなんの関係もないですよね」

「――っ」


あぁ、また言ってしまった。


『あなたと私は何の関係もありませんから』
そんな意味合いに取られてしまうような言い方をして、また怒らせてしまった。


昂良先輩は黙ったまま険しい顔をしている。
言いたいこともあるだろうけど、私の言葉で何も言えなくなっている。


私もここまで言うつもりじゃなかった。
再会してからは顔を合わせればお互い憎まれ口ばかりで、もう昔のことは終わったこととはいえお互いのわだかまりがスッキリ解消した訳じゃない。


だからこうやって顔を突き合わせれば、喧嘩腰になってしまうのだろう。


どちらかが歩み寄らなければ、いつまで経っても平行線ということは分かっているけど……お互いプライドが高くて困ってしまう。


だけど、いつまでもこのままではダメだ。


「……すみません、言いすぎました」

「あ、いや……俺の方こそごめん。しつこかったな」

「違います。私が誤解させるような言い方してしまったから……。的場さんとは付き合うつもりもないのに変な言い方して」


そう言うと先輩は気まずそうに髪をかき上げながら、苦笑いしている。
私も勇気を出して素直に謝れたおかげで、少しだけ肩の力が抜けた。