会議も終われば昼間の忙しさは何処へやら。
平穏無事に定時を迎えてしまった。


「残業が無いって恨めしい……」


仕事がこの上なく順調に進んでしまったことに愕然とする。
こんな時に限って仕事が捗るなんて、変な責任感の強さを発揮した自分に腹が立つ。


今すぐにでも出られるけど、いくらなんでも定時ピッタリに連絡を入れるのは、楽しみにしてるみたいでイヤだ。


だからもう少し仕事をして……


「若宮ちゃん、おつかれ。終わってるなら帰っていいよ〜。あとはうちらで処理しとくから」


あぁ、有能な先輩方のなんて優しいこと。


「あ……はい。では、お言葉に甘えてお先に失礼します」

「はーい、また明日ね」


決して邪魔者扱いされてるわけじゃなく、ただ気遣ってくれてるだけ。


でも今日に限ってはもっと使ってくれていいんですよ!と社畜のような思考になってしまう。


諦めてスマホを取り出し、昂良先輩に連絡を入れた。


『すみません、定時なので先に出ておきます。先輩は仕事を終えてからゆっくりでいいので。時間は気にしないでください』


忙しい部署の昂良先輩はきっとまだ時間がかかるだろう。
そしてなるべくなら二人で会う時間を、極力少なくしたい。そうすれば気まずい時間も少なく済ませられる。
と踏んで連絡を入れたのに……


『俺も終わったところだから向かう。なんならロビーで落ち合おう』


えぇ……。
思わず天を仰いでしまった。


『了解しました』


バカ正直に定時で連絡入れるんじゃなかった。
先に一人でコンビニ行ってからでよかったのに……と、会う時間が逆に長くなってしまったことを後悔した。